agnès b.の海洋環境調査団体「タラ・オセアン財団」日本支部fondation taraocean japanと、マリンバイオ共同推進機構JAMBIO (Japanese Association for Marine Biology) による共同プロジェクトによる調査結果が報道*¹されていたので要約します。
*¹朝日新聞2025年11月5日付夕刊、社会・総合面『マイクロプラスチック 日本沿岸でも汚染進む』。以下の括弧内は引用です。
これは日本沿岸の海底汚泥と、表層海水に含まれるマイクロプラスチック*²について「2020年から約3年間かけて(中略)全国15ヵ所の拠点で計約300サンプル採取し、分析した」結果報告です。
「プラスチックは全サンプルから検出され、海底では、1平方キロ当たり平均1185キログラムに達した。材質は日本での使用頻度が高いポリプロピレンやポリエチレンが多く、河口付近の数値が高いことから、大陸からの漂着ではなく国内から出たものとみられるという」(海洋生物学者であるプロジェクトリーダーの解説による)。
「人口の多くない場所で高い数値になる場合もあり、漁業や養殖時に使われる網などが発生源になっているとみられるという」
「また、表層水に含まれるマイクロプラスチックは1平方キロ当たり約300グラムで、世界各地の調査で最も高い数値を出した地中海に匹敵する数値だった」
「日本は、1人当たりのプラスチック廃棄量が年間約32キロ(2018、国連環境計画)に上り、米国に次ぐワースト2位である一方、リサイクル率は約9割に達する」
「廃棄物処理が進む日本の近海でもプラスチックの汚染が大きいことが証明できた。汚染を減らすにはリサイクルだけではなく、消費や生産を減らす野心的な目標を立てることが必要だ。私たちの健康にも影響が懸念される」(タラ・オセアン財団のエグゼクティヴ・ディレクター)。
言うまでもありませんが、健康上の懸念とは、日本に住む人々のみならず、世界中の人々も対象としています。
*²紫外線や波などで劣化、崩壊した粒径1マイクロメートル~5 mmのプラスチック粒子(1マイクロメートルは1 mmの1000分の1)。更に微細な粒子をナノプラスチックと呼びます。ナノメートルは100万分の1ミリ(1ナノメートルは1 mmの1,000,000分の1)。
コロンビア大学の研究チームは、1ℓのペットボトル水には平均24万個の微小プラスチックが含まれていると、アメリカ科学アカデミー紀要に発表しました。9割がナノプラスチック、残り1割がマイクロプラスチックでした。
魚を食することで、プラスチック微細粒子及び添加剤を体内に取り込みます。食物連鎖により魚類に蓄積されるからです。また、空気中に漂っているものを吸い込んだりもします。ヒトの心臓、脳、肺、血液、母乳、精液、便、等からプラスチック微細粒子が検出されています。日本の学界報告によると、人間ドックや病理解剖を受けた11人中4人の血液からプラスチック微細粒子が検出されました。
プラスチックが劣化してマイクロプラスチックやナノプラスチックへと崩壊する過程で、添加剤が溶け出します。それら化学物質が人体内で「炎症」を引き起こします。また環境ホルモン(内分泌撹乱物質endocrine disruptor(s))でもあるのです。プラスチックに含まれる添加剤は1万3千種類以上あり、人体や生態系への有害性が懸念されるのは3200種類以上という報告があります(国連環境計画・UNEP報告2023)。
有毒性が懸念される添加物は、欧州では予防原則に基づいて厳しい規制を行っています。しかし日本では例によって、野放し状態です。
(朝日新聞2025年7月15日付、科学面『体内に入るプラスチック リスクは』を参照しました)
〈掲載写真について〉
定点観測者が最近の画像を送ってくれました。早朝の神戸舞子浜の様子です。東へ約7キロ行くと須磨海岸があります。どちらも明石海峡を臨みます。
今の時期は漂着ゴミが比較的少なく、回収作業が終わった後ともなれば、散策を楽しめる程度に落ち着いています。作業を行ってくださっている方々に感謝致します。
石橋宗明
