2023.09.30 2023.04.15 斎藤 智 / SAITO Satoshi (1936-2013) 東京に生まれる. 東京藝術大学油画専攻(小磯良平教室)卒業.1974年フルブライト奨学金を得て渡米、イリノイ工科大学で学ぶ.1976年第10回東京国際版画ビエンナーレ国際大賞受賞.1980年第5回ノルウェー国際版画ビエンナーレ展大賞受賞.神戸大学で教える. 斎藤智「Untitled」 82×105cm(シートサイズ)、2/9チバクロームプリント、1975年 以下、中原佑介『現代芸術入門』(美術出版社、1979年)からの抜粋。A- 写真は一種の視覚実験の手段になっているといえませんか。B- 手段のような性格を帯びているといえるかもしれませんね。斎藤智になるとニュアンスが少し違っています。しかし、視覚のひねりということではディベッツと共通していないでもありません。斎藤は室内とか屋外の風景写真を撮り、それを引伸して大きなパネルにし、そのパネルを再び室内とか屋外に置いてもう一度(さらにそれをくり返して)写真を撮るということを試みている美術家です。A- はじめに話に出た「写真をもう一度写真に撮る」というのに似ていますね。B- ある面ではそうですね。風景写真のなかにもう一枚(数枚)写真があるわけですからね。この作品がおもしろいのは、写真としては同じ場所を二度(数度)撮っているのですが、二枚(数枚)の写真が時間のズレの表現になっていることです。A- 同じ風景を対象にしている写真だが、写真のなかの写真の方が過去の風景だということですか。しかし、いわれて見るとなるほどと思うけれども、そのズレは眼には直接見えませんね。B- 過ぎ去った時間を見ることは不可能ですからね。 (pp.135-136) 斎藤 智 「酒場の画廊主」(仮題) 色鉛筆 24×15cm 1988年 斎藤智: photograph / トアロード画廊