「アパルトヘイト否(ノン)! 国際美術展」(Art Against Apartheid)は、反アパルトヘイト世界芸術家協会と国連アパルトヘイト対策特別委員会とが主体となり企画された。34ヵ国81人の作家が参加、154点もの作品を提供した。1983年のパリ開催を皮切りに、作品群は諸国を巡った。日本では北川フラムさんが応じ、事務局長を務めた。国内の開催希望地の人々と交流・交渉の場を持ち、専用の大型トレーラーでもって作品を搬送したのだった。神戸市展の開催期間は、1989年5月23日から28日までの6日間、〈画廊ポルティコ〉(神戸市都市局)と〈アートホール神戸〉(兵庫県学校厚生会)の二会場に分散させて全作品を展示した。
実行委員会の名称が〈事務局アクア〉と決まったので、専用の預金口座を開設する必要があった。アパルトヘイト体制への批難が高まり、真っ先に南アフリカから撤退した日本の銀行は、東京銀行だった。必然的にこの銀行を選ぶこととなった。ボイコットやバイコットは、簡単に取り掛かれる効果的な意思表示であるが、この場合はバイコットにあたる。更に言うなら、外国為替を専門とする行内の雰囲気と、モダニズム建築とが相まって、私は神戸支店が気に入っていた。そこで口座を開く、そう考えただけでも気分が上るのだった。 他方ボイコットの対象となると、言うまでもないが「名誉白人」たちが利益を上げ続けている銀行、及び現金輸送車である。小説や映画では「襲撃もの」(caper)というジャンルがある。現金や宝石、美術品を強奪する過程を描くものだが、多くはチームで仕事をする。私がもっとも好きな映画は、ピーター・イェーツ監督の『ホット・ロック』(”The Hot Rock”1972年)だ。アフリカのダイヤモンドを巡る争奪戦だが、誰一人として死なない。徹頭徹尾、考え抜いたハッタリで勝負する。それが彼らの流儀なのだ。『ホット・ロック』のような粋で面白い作品に出合うと、銃を乱射し、ナイフを振り回す連中が唯の間抜けに映る。