ゲリラ豪雨localized torrential rain(局地的大雨、集中豪雨)発生の原因としてもマイクロプラスチック(及びナノプラスチック)が疑われています。ポリエチレンやポリプロピレンなどが紫外線で劣化すると、マイクロプラスチックやナノプラスチックへと分解されます。それらが核となり水蒸気が付着し、雲を形成します。急速に雨雲を発達させるマイクロプラスチックのホットスポットが、大気中に出現する可能性について、解明が進められています。
大気中のマイクロプラスチック(1マイクロメートル*以下の場合)は、ヒトの肺にまで到達します。イギリスの研究では、肺の手術を受けた人から提供された13件のサンプルの内、11件からマイクロプラスチックが検出されました。
*0.001ミリ=1㎛
自由対流圏とは、高度2500メートルを超える大気層を示し、偏西風やジェット気流と接しています。マイクロプラスチックの拡散は、その自由対流圏にまで及んでいます。低気圧による上昇気流が、地上や海面のマイクロプラスチックを巻き上げるのです。偏西風やジェット気流に乗ったそれら微細粒子は、長距離移動し、例えば北極圏の雪から、1ℓあたり1万個以上が検出されています(ドイツとスイスの研究チームによる)。大気の循環システムに有害物質が混じり込むと、地球規模の汚染に発展します*。プラスチック消費量の少ない国や地域もまた、雨や雪を通じて汚染被害を受けてしまいます。そうした状態を軽減、終息に向かわせるには、プラスチックの消費そのものを減らしてゆくしかありません。都市に於けるリサイクル・焼却処理能力には限界があるからです。
(朝日新聞2025年11月28日付『地球規模で広がる 大気中プラ』を引用、参照しました)
*ヨーゼフ・ボイスJoseph Beuysの死去から3か月後、1986年4月26日、ソ連のチェルノブイリ原発で事故が起こりましたChernobyl Nuclear Power Plant Accident。火炎で噴き上げられた放射性物質は、ジェット気流に乗り、一週間後には日本にも到達しました。雨に混じって降ったのです(放射性降下物nuclear fallout)。そうなるまで気象庁Japan Meteorological Agencyは、ジェット気流のことをすっかり忘れていたようです。放射性ヨウ素131がヒトの母乳からも検出される事態となりましたが✝¹、「専門家」は当初、8千キロ離れた日本列島には「まずは来ないだろう」✝²と言い切っていました(正反対に、あるベテランの気象予報官は「来ないはずがない」と呆れ返るのでした)。2011年3月11日に発生した福島原子力発電所のメルトダウン事故Fukushima Nuclear Power Plant Accidentの際、気象庁は地球規模での放射性物質の拡散シミュレーションを間断なく行っていました。国際原子力機関(IAEA)にはデータを提供していましたが、日本国内での公表は忘れていたようです。
✝¹毎日新聞1986年5月21日(水曜)付、第一面。
✝²毎日新聞1986年5月5日(月曜)付、社会面。
科学的な言説が科学として浸透、定着してしまうことがあります。検証に値する新説や異論が出てくるならば、科学は決して無視しません。弾圧など論外です。検証の結果によっては、従来の常識が覆されるのです。ネットに流布された不確かな情報は当然のことですが、大手メディアの報道であっても懐疑的に受け止め、複数の文献に当たりながら自ら考えてみることが大切です。判断が付かない場合は、一旦、保留状態にしておきます。そうしたことを心掛けることにより、科学の姿勢を維持できます。
さて、ヒトの血液と臓器からマイクロプラスチックが検出され、それらに付着している添加剤に有害性が認められるのなら、ヒトや野生生物に疾患を引き起こす原因と定めるべきです。科学の見地が、既に異論を凌駕している状態、予防原則に基づいて行動を起こすべき事態に至っているのです。
原因物質を使わない、極力避けるという日常を送るのなら、その人は既に藝術家です。藝術家とは、生命の尊厳を守り、奉仕する人のことを言います。自由の精神を有し、創造的です。破壊の為の破壊に耽溺している人々とは、真逆に位置しています。Joseph Beuysは次のように書いています。「そうした革命的な芸術概念のみが、ひとつの政治的生産力となるのであり、その生産力は、各個人を通じて生起し、歴史を形造るのである」(ハーラン、ラップマン、シャータ『ヨーゼフ・ボイスの社会彫刻』p.121、伊藤、中村、深澤、長谷川、吉用訳、人智学出版社、1986年)。
〈参考〉マイクロプラスチックとは、紫外線や波などで劣化、崩壊した1マイクロメートル~5 mmのプラスチック粒子(1マイクロメートルは1 mmの1000分の1)。更に微細な粒子をナノプラスチックと呼びます。ナノメートルは100万分の1ミリ(1ナノメートルは1 mmの1,000,000分の1)。
プラスチックが崩壊する過程で、添加剤が溶け出します。それら化学物質が人体内で「炎症」を引き起こします。また環境ホルモン(内分泌撹乱物質endocrine disruptor(s))でもあります。プラスチックに含まれる添加剤は1万3千種類以上あり、人体や生態系への有害性が懸念されるのは3200種類以上という報告があります(国連環境計画・UNEP報告2023)。
〈掲載写真について〉
朝焼けの神戸舞子浜。11月18日。定点観測者が撮影しました。
石橋宗明
