“PFAS” FREE

Capitol Hill in Washington D.C. on November 19,2019. (Photo by Marvin Joseph/The Washington Post via Getty Images)

30年も前のことだが、日本の大学で学んでいたアメリカ人の若者が、ジェスチャーを交えながら、テフロン加工されたフライパンで料理をすると、体内に毒を取り込むことになる、だから絶対に使わないと言うのだった。彼は理系の修士課程に在籍していて、化学に詳しい。コーティング剤で覆われたフライパンは、焦げ付きにくく便利なので、私の家庭にも備えてあった。だが翌日には、そのテフロン(デュポン社の商標)をさっさと捨てて、鉄製品に買い替えていた。テフロン加工にはPTFEというフッ素樹脂が使われていて、高温状態になると有毒ガスを発生させる。また、そのフッ素樹脂をフライパンに接着加工する際に、PFOA・PFOSと呼ばれる有害な有機フッ素化合物を用いるのである。今ではPTFE・PFOA・PFOSフリーと表示された商品が多く、安全なものを選ぶことができる。

水道水に含まれるPFOA・PFOSによる体内汚染を極力防ぐ為、PFOA・PFOSを高率除去できるフィルターを用いた浄水器の使用を勧める。特に妊婦、小児、そして若者は自ら、あるいは周囲の大人・保護者が用意するとよい。水道水を蒸発させながら煮立て、飲用するのは避けよう。なぜなら、却って不純物の濃度を高めてしまう恐れがあるから。高額な浄水器を言葉巧みに売りつけようとする者たちも現れるだろうから、耳を貸さないように。もし押し切られ契約してしまっても、国民生活センターや、消費者センターに相談すれば解決できる。

阪神間に住む私は、琵琶湖-淀川水系の水道水を日々利用している。しかしPFOAを初めとする有機フッ素化合物が混じっていることを知り、PFOA・PFOSを高率で除去できる浄水ポットを購入した。水源となる河川をPFAS(有機フッ素化合物の総称)で汚染させているのは、大阪のダイキン工業である。1960年代後半頃からPFOAを製造・販売していたが、2015年に打ち切っている。米ウェストバージニア州に於けるデュポン社を相手取った集団訴訟に端を発したPFOAの使用中止が、ダイキン工業にも及んだ形だ。因みにデュポン社は、人体に有害であることを知りながら40年間も隠蔽し続けていた。

琵琶湖-淀川水系のPFOA汚染は終ってはいない。PFASは自然環境では分解されない為、その一種であるPFOAもまた、現在も高濃度で検出されている。またダイキン工業は、代替物質としてPFHxA(PFASの一種)を工場から排出させており、新たな汚染が進行している疑いがある。神戸市は阪神水道企業団から、阪神水道系と呼ばれる水を購入しているが、この水道水には琵琶湖-淀川水系の水が4分の3含まれている。ダイキン工業が直ちに環境汚染を止め、汚染除去を徹底して行わない限り、阪神間の人々は安心して水道水を利用し、海遊びを楽しむことができない。以下に述べるように、今後は明石市に住む人々にも被害をもたらすことになりかねない。

環境省のホームページに、令和3年度公共用水域及び地下水のPFOS及びPFOA調査結果一覧があり、北海道から鹿児島までの河川・地下水・湖沼・海域を任意に測定した結果を見ることができる。

令和3年度公共用水域水質測定結果及び地下水質測定結果について | 報道発表資料 | 環境省 (env.go.jp)

それによると、神戸市西区にある明石川の測定数値が非常に高いことが分かる。上水源取水口で160ナノグラム/ℓ(PFOS・PFOA合算)、1.2㎞ほど上流にある玉津大橋で270ナノグラム/ℓ(PFOS・PFOA合算)である。そのほとんどをPFOAが占めており、日本の暫定基準は1リットルあたり50ナノグラムなので、3倍から5倍という値である。明石川は、神戸市北区を源流とする二級河川で播磨灘へと流れ込んでいる。そしてそれは、明石市市民に供給する水道水の主な水源なのである。

汚染源は上流域にあると考えられ、神戸市環境局環境保全課が調査を行っている。明石川を巡っては、過去にも汚染問題が持ち上がっている。神戸市西区神出町にある4か所の産業廃棄物最終処分場から処理水が流出し、発がん物質であるトリハロメタンの値が、国の管理目標ぎりぎりにまで上がった。明石市は神戸市に対し、明石川への放流を止めるよう申し入れるが、排出基準を満たしているとして応じなかった。今回のPFOS・PFOA汚染についても、それら産業廃棄物最終処理場と関係があるのだろうか? 神戸市はその可能性も含めて調査をしているという。明石市はかねてから、明石川の水からPFOS・PFOAが検出され、浄化処理後も残留していることを憂慮していた。成り行き任せではいられない。河川の汚染は続くものの、まずは早急に安全な水道水の確保に取り掛からなくてはならない。明石市は行動を起こし、2020年6月22日、明石川からの取水を止める方針を明らかにした。現在、阪神水道企業団からの受水に切り替える手続きを進めている。完了の目処は2025年である。しかしながら、ダイキン工業がその企業姿勢を改めない限り、明石市市民は新たな不安に直面することになるのである。

石橋宗明