公益通報・内部告発者は保護されなくてはならない。 blog 2025.01.23 2025.01.21 Giovanni FalconeThe Italian judge Giovanni Falcone is escorted by police out of the Court of Palermo, Italy, on May 16, 1985. Giovanni Falcone was killed by the Mafia in 1992. (Photo by Vittoriano Rastelli/Corbis via Getty Images) 公益通報者は保護されなくてはなりません。審議を行う委員会委員も同様です。それを怠るのであれば、公益通報・内部告発は抑制され、不正がはびこり、私たちの社会を蝕んでゆきます。通報により、権力犯罪や企業犯罪を白日の下に晒すことができるので、民主主義的な状態を維持するための、命脈の一つとも言えるのです。しかし通報があっても適切な対応がなされなかったり、保護措置が講じられず犠牲者が続いたりと、私は大いに憂慮しています。 30年前、ジョヴァンニ・ファルコーネというイタリアの判事が次のように言っています。「シチリアではマフィアが国家に奉仕している人たちを殺しているというのに、国家はその人たちを保護できずにいる」*1。私たちの住むこの国は今も尚、同じような暴力が吹き荒れているように思います。報道の自由度が70位*2という低さの中、SNSがおぞましい凶器に変貌しています。 ジョヴァンニ・ファルコーネ判事は、マフィア組織を壊滅すべくその構成員を大量検挙しました。1986年2月、「史上最大のマンモス裁判」がパレルモで始まり、証言を基に証拠を固め、翌87年には最高幹部に終身刑を言い渡すことができました。ファルコーネ判事は、一般市民か改心者かを問わず、証言をしてくれる人たちの身辺警護を厳重にし、自らの命も巧みな戦術で守っていました。しかし1992年5月23日、ファルコーネ元判事が故郷のシチリアに戻る為、空港とパレルモを結ぶハイウェイを時速160キロで走行中、側溝に仕掛けられた数百キロもの爆薬が炸裂しました。ファルコーネ元判事と夫人、警護の警察官が死亡しました。その警察官の妻である、ロザーリア・コスタ・スキファーノさんは葬儀の日、「私はあなた方を許します。でも、ひざまずいて自分の罪を悔いて下さい」と呼び掛けました。多くのマフィアがこれに応じ、改心したと言われています。 1)ジョヴァンニ・ファルコーネ『沈黙の掟 - マフィアに爆殺された判事の「遺書」』(”COSA NOSTRA” 1991)、千種堅訳、文藝春秋、1993年。P.201から引用、他参照しました。2)国際NGO「国境なき記者団」による2024年〈報道の自由度ランキング〉から。主要7か国(G7)では最下位に留まったままです。 石橋宗明